心さん、そろそろ俺にしませんか?
「おうら西川ー!元の場所に戻してきたぞ!」
すぐに、心さんは戻ってきた。……西川先輩の名前だけを呼んで。
「お~ご苦労っ」
「原田、相手疲れただろ?体育館に戻るか!」
西川先輩と心さんが前を歩き、俺は一歩下がって歩き出した。
この距離は、自分で作った。そりゃ、心さんが西川先輩と話すのは当然なんだ。
だから、遠い。届きそうで届かないこの距離がもどかしい。2人の姿を並べてみるのが、嫌で仕方がない。
それでも、好きな人の笑顔が見ていられるのなら、この状況も少しは耐えられる……少しは。
「じゃーな!あたしはチア部の方へ行く!」
心さんと別れ、西川先輩と2人きりになるかと思いきや、西川先輩も先輩達の元へ足を運んだ。
「お~お疲れのご様子で」
ニカッと笑うその口に、チョコレートがベッタリと付いているイチがお出迎えをしてくれた。