心さん、そろそろ俺にしませんか?
「ずっと傍観してても、そりゃ心さんは西川先輩に惹かれていくばっかりだぞ~」
イチの言葉が当たっているから何も言えない。
「ほら、部活動対抗リレー頑張るぞ」
イチから拳を突き出されて力なく返すと、ちげーだろ!と力強く押された。
ハチマキを握りしめてイチと歩く。俺、何もしてなかったんだよな。そりゃ、距離が開いていってたわけだ。
ふと、前方を見ると、チア部の格好から体育着に着替えた心さんが歩いているのが見えた。
「イチ……」
「行け!俺は他の先輩達と話す」
今がチャンスだよな。先輩達もいるけど……気にしない。
「こ、心さんっ」
辺りを見回してから後ろにいる俺に気づいた心さん。日焼けした顔がいつもと違う心さんを魅せる。
「原田!お前も今から集合場所に行くところか?」
「はい」
「一緒に行こうぜ!あ、そこの君も!」
イチのことも指さして、一緒に行けることに。