心さん、そろそろ俺にしませんか?
「あ!そうだ、原田!」
心さんが俺を呼び、俺のところへ近づいてきた。
「遅くなっちまったけど、8月12日はおめでとう」
─────え?
「お前、夏休み誕生日だっただろ?悪い、すっかり忘れててさっき思い出した。今日12日だなって……」
「あ、ありがとう、ございます」
まさか、本当に覚えてるとは思わなかった。忘れてても思い出してくれて……やべぇ嬉しい。
「その分いっぱい応援してやる!じゃあなー」
無理、もう無理。顔がニヤける。
「優生、お前マジでアイス奢れな?」
「わかってる、けど……やべぇよイチー」
「はいはい。キモい顔のまま走れよ」
それは嫌だ。いつもの冷静さを取り戻してチームの元へ。そして、競技がスタートした。
第1走者の心さんは、コケることなく爽快なスタートを切った。真剣に走る姿がカッコ良かった。
恥ずかしくて声には出せなかったけど、心の中で精一杯応援をした。