心さん、そろそろ俺にしませんか?
それは心臓がやばいです。
「いやぁ!」
バシッ
「っ!」
バシッ
2本の竹刀が目の前で交差する。俺は力を振り絞って相手を押していく。だが、相手も負けちゃいない。
「いやぁっ!めぇーんっ!」
『1本!』
旗が俺の方にあがる。よっしゃ、と内心喜びを感じていた。
『勝負あり!』
審判が俺の方に手を伸ばす。それが俺が勝った証拠だった。蹲踞をして笑みを浮かべる仲間の元へ足を運んだ。
「やったな、原田!」
「はい。でもまだまだっす」
「そこは素直に喜べよ!」
今日は新人戦。体育祭の余韻を残すことなく、この日を迎えた。高校で初めての試合で、喜びと不安が俺の中で調和していた。
でも、いざ試合となると戦うことに夢中だった。普段の練習で身につけたことも、全部ぶっ飛んでいた。
「弾けてたな、優生」
「それ、褒めてんの?」
「普段のコーチの指導をめちゃくちゃにしてて、尊敬したってことだ」
おい、イチ。それ、全然尊敬じゃねぇから。