心さん、そろそろ俺にしませんか?
「原田」
冗談だろ。早速、監督から呼ばれた。急いでコーチといる監督の元へ向かった。
「お前、ボロボロだな」
「はい」
「俺の言ったこと、何も頭に入ってなかったな」
「……すみません」
「謝るくらいなら明日まで残れ。そして、俺からの今回の説教を食らうんだな」
説教は嫌だけど、明日まで残りたい。そのためには勝つしかない。
「お前の自己流は見たくないけど、今回はデビュー戦ってことで大目に見てやる」
遠回しに俺が指導したこと思い出せって言われているみたいだ。そうか、今回だけ許しが出たってわけか。
「はい!ありがとうございます!」
普段は大きな声で挨拶することが少ない俺が、声を張り上げて頭を下げた。
「これからが楽しみだな」
監督の元から去るときに、監督とコーチが呟いていたのが聞こえて、自分の口角があがるのがわかった。