咲く*ラプンツェル
やっと慣れて見えるようになった塔の下には、小道が一本通っていた。人通りは少ない。
そしてその奥は森。
あちらこちらから小鳥の鳴き声が聞こえる。
正面いっぱいに広がるのは、どこまでも続く青空。
その風景は、やっぱり絵本で見た通り。
「…あっ、時間!」
おもむろに自分のスマホで今の時間を確かめた純ちゃんがそう言った。
心なしかそわそわしだして。
「どしたの、純ちゃん」
「…あのね心、わたし今日合コンなの」
「合コ…純ちゃんモテるよねぇ」
「でも男より心だから大丈夫よ!」
「? そっかー」
また笑顔を向けてくる純ちゃん。これから出かけるらしい純ちゃん。
そうだよね、魔女はあんまり塔にはいないものだよね。
寂しいなんていいません。