咲く*ラプンツェル
ギシギシ、ギシギシ。
その人はわたしのみつあみをひっつかんで塔を登ってくる。
「…って何やってんの!」
女の子の髪の毛を引っ張って登ってくるって何してんの!
痛いでしょ!!
ふつうに痛いっ……くない。
「痛くない…!」
これほどの量と長さになれば男の人ひとりの体重なんて軽いもの。なの、かな…、?
引っ張られるけど全然痛くない。
「…っしょ」
感動してるうちに、その人は窓枠に手をかけた。声に反応してわたしは振り向く。
「……! あっ!!」
───月明かりに照らされて
夜空を背に
暗闇に光を射すように現れたのは。
「ふぅ…」
「とーま!!」
…なんて素敵。
「透真! 何してんのそんなカッコでっ」
「つっこむな、心」
王子さま姿の透真。わたしの、幼なじみ。
さっき暗闇に響いた静かな声に似つかわしく、落ちついてて大人っぽい。
「俺 王子だからよろしく」
「ほんと!? わたしラプンツェルだよ!」
「知ってる」