咲く*ラプンツェル
咲く*ラプンツェル
├空が飛べない魔女
桜も色づく春休み最終日、
わたしは不思議な体験をしました。
「はて…」
───薄暗い部屋。狭い部屋。
キョロキョロ、さっきまで隣にいた幼なじみの姿を探す。
「…とうまー?」
部屋には、ひとりだけ。
返事はない。
……え、なんでだっけ、
さっきまでどこにいたっけ、
おかしいな。
そう思ったけど、何よりも誰よりも、自分がおかしいということを、わたしの脳ミソは理解した。
ぶっちゃけ大混乱で飛び出しそうな心臓をおさえながら、落ちついて落ちついて、整理する。
…たとえば格好。
ひらひらふわふわの薄ピンク。もぞ、と動くと腰元についたリボンが揺れる。
なにより髪の毛。
長い。長い長い。
床を見渡すと、わたしの髪がへたりとまとまっている。メートル単位で長い。
「…………」