咲く*ラプンツェル
その場から離れないわたしの腕を、今度は強めの力で純ちゃんが引っ張る。
もう足は床にはりついてなかった。
…でも、ねえ、透真、
「とうま、とうまっ」
もうその目に、わたしの姿が映ることもないって、本当?
「…泣くなよ、心」
…目が
見えてないのにどうして分かるの?
自分だって泣きそうな声で、どうしてその声をわたしに届けるの?
純ちゃんに引っ張られて、わたしの足が動く。
月明かりが強い窓の方に向かっていく。
「やだよ、とうま…っ」
純ちゃんが振り返らず窓枠に足をかけた。わたしの腕を引いたままだ。
ベッドを背にしてうずくまったまま透真も、絶望を感じているのかな。
右手を目から離さない。
ぐっとまた腕が引っ張られた。
「ねぇっ、純ちゃ…」
純ちゃんの背中はマントで真っ黒。
星ばかりの空にそれは映えて
「…魔女と王子は、どうして───」
その小さな魔女の本音も、わたしにははっきり聞こえた。