【短】卒業~ずっとキミが好きでした。~
夏休みが開けると、さっそく2学期の席替えもあって、私は柏木ともアイラちゃんとも遠い席になった。
まだ柏木のことをひきずっていた私は、もう柏木の隣にいられないことが寂しかったけれど、その反面、ホッと安心していた部分もあったんだ。
けれど、2学期が始まってわりとすぐに、柏木とアイラちゃんが別れたというウワサを耳にした。
ウワサによれば、アイラちゃんが柏木のことをフッたのだとか……。
だけど、柏木がアイラちゃんと別れたからといって、私と柏木の関係は何も変わることはなかった。
それどころか、もっと最悪な状況が私を待っていたんだ……。
それは、昼休み開けの出来事だった。
校庭で友達とバレーボールをして遊んでいた私が教室に戻ると、黒板にデカデカと書かれた落書きが目に飛び込んできて、私は心臓が止まったかと思った。
そこに書かれていたこととは、
“香山ゆずは、柏木翔太が好き♡”
何これ……!?
誰が、こんなこと……
その場で固まる私。
すると、近くにいた女子たちからこんな声が聞こえてきたんだ。
『柏木の机の中に、香山さんからのラブレターが入ってたらしいよ。たまたま、柏木の席に座ってた男子が発見したとか』
……っ!
ラブレターって、なんのこと!?
私、ラブレターなんて書いた覚えもなければ、それを机の中に入れた覚えだってないよ?
いったい、何がどうなってるの?
「誰だよ、こんなこと書いたヤツ!」
……柏木。
気付けば、教室に戻って来た柏木が後ろのドアに立っていて、柏木は黒板の落書きを見つけるなり怒りがこもった声でそう言うと、黒板の前までいき、その落書きを黒板消しで乱暴に消し始めた。
滅多に怒ることがない柏木が、今は誰から見たって物凄く怒っているのがわかる。
だから、一瞬にして教室中がシンと静まった。