【短】卒業~ずっとキミが好きでした。~
そして、キミがいる3組の順番がまわってきて。
『柏木翔太!(かしわぎしょうた)』
ドクンっ!
私が3年間好きだった人の名前が呼ばれた。
今私、自分の名前を呼ばれた時以上にドキドキしている。
「はい!」
キミの低くて大きな返事を聞いた瞬間、私の胸が熱くなる。
中学に入学したてのあの頃は、まだ声変わりなんてしていなかったのに。
身長だって、私よりも少しだけ低かったはずなのに。
それなのに、今では余裕で私を上から見下ろせるくらい背が伸びている。
卒業証書を受け取ると、壇上前の階段からキミが下りてきた。
ドキドキドキドキ。
私の鼓動はさらに早くなるばかり。
キミの艶のあるサラサラの黒髪が揺れて、二重の大きなその瞳は輝いているように見えた。
童顔で、女の子みたいに可愛い容姿をしていたキミは、入学当初、よく男子からは“女みてぇな顔”だとか、からかわれたりもしていたけど。
今じゃ女子たちからは“ジャニーズ系”だって騒がれて、下級生からも「柏木先輩、カッコイイ!」なんて言われてモテまくっている。
今日、卒業式後に下級生から学ランの第二ボタンを狙われたり、下級生に取り囲まれている姿が簡単に想像できてしまう。
きっと、私が近づける隙なんてない。
だから、今だけは。
キミのことをしっかりと目に焼き付けさせて……。
今日で最後だから。
今日でキミからも卒業するから……。