【短】卒業~ずっとキミが好きでした。~




ある日のこと。



「このペンさ、俺にくれない?」



柏木は、勝手に私のペンケースの中からインクの量が残り少ない赤い水性ペンを取り出すと、唐突にそう聞いてきた。


だけど、その赤い水性ペンは私が毎日必ず使っているもので。



「これ、毎日使うペンだからあげるのはちょっと……、」



まだ、替えの新しいペンを用意していないからなくなっちゃうと困るし……。




「じゃあ、インクがなくなったらくれよ」


「え?インクがなくなったら書けないよ?」


「いいのいいの」



えー?へんなの。


なんで、インクがなくなった空っぽのペンなんて欲しいんだろう?


インクが出ないペンなんて、使い道なくない?



そんなものをどうして欲しいのかはわからないけど、本当にインクが空になったペンをあげるのもなんだか気が引けるっていうか……。


「じゃあ、いいよ。これ、あげる」


だから私は、柏木が欲しいと言ったそのペンをあげることにした。



「マジで?サンキュー!」


クシャッと大きな目を細めて嬉しそうに笑う柏木の笑顔に、胸がキュンとなった。




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