【短】卒業~ずっとキミが好きでした。~
「ねぇ、柏木。私にも何か頂戴よ?」
私も欲しかった。
好きな人のものを。
柏木のものを。
私からの思いがけない催促に、柏木は目を丸くしている。
「何が欲しい?」
だけど、すぐに柏木は自分のペンケースを私に差し出してきた。
「えっと、」
っていうか、ほんとに何かもらってもいいの?
「香山が気に入るようなものがあるかわかんねーけど、どれでも好きなのやるよ」
……っ!
えーっ!
まさか、そんな風に言ってもらえるとは思わなかったよ。
でも、迷っちゃうなぁ。
好きな人の物なら、どんなものでももらえたら嬉しいし。
「プッ!そんな険しい顔して悩むなよ」
え?私、そんな険しい顔なんてしてた?
笑われて恥かしいな。
「じゃあ、これやるよ」
迷ってなかなか決められない私に、柏木から一本の黒いシャープペンを私にくれた。
「なんか高級そうなペン……。本当にもらってもいいの?」
欲しいと言ったのは私の方なのに、急に申し訳なくなってきちゃった。
「それ、俺が持ってる中で一番書きやすいシャープペンだから使ってみて」
「え?」
一番書きやすいシャープペン?
それを、私にあげたりしていいの?
申し訳ない気持ちと同時に、嬉しい気持ちが広がっていく。
「柏木、ありがとう。大切にするね」
もしもまた、今度柏木が私のペンを欲しがることがあったとしたら。
そしたら、その時は、私の一番お気に入りのペンをあげることにしよう。
そう思った。