【短】卒業~ずっとキミが好きでした。~



「ねぇ、柏木。私にも何か頂戴よ?」



私も欲しかった。


好きな人のものを。


柏木のものを。



私からの思いがけない催促に、柏木は目を丸くしている。



「何が欲しい?」


だけど、すぐに柏木は自分のペンケースを私に差し出してきた。


「えっと、」



っていうか、ほんとに何かもらってもいいの?



「香山が気に入るようなものがあるかわかんねーけど、どれでも好きなのやるよ」



……っ!



えーっ!

まさか、そんな風に言ってもらえるとは思わなかったよ。



でも、迷っちゃうなぁ。


好きな人の物なら、どんなものでももらえたら嬉しいし。



「プッ!そんな険しい顔して悩むなよ」



え?私、そんな険しい顔なんてしてた?


笑われて恥かしいな。



「じゃあ、これやるよ」



迷ってなかなか決められない私に、柏木から一本の黒いシャープペンを私にくれた。



「なんか高級そうなペン……。本当にもらってもいいの?」



欲しいと言ったのは私の方なのに、急に申し訳なくなってきちゃった。



「それ、俺が持ってる中で一番書きやすいシャープペンだから使ってみて」


「え?」



一番書きやすいシャープペン?


それを、私にあげたりしていいの?



申し訳ない気持ちと同時に、嬉しい気持ちが広がっていく。



「柏木、ありがとう。大切にするね」



もしもまた、今度柏木が私のペンを欲しがることがあったとしたら。


そしたら、その時は、私の一番お気に入りのペンをあげることにしよう。


そう思った。


< 7 / 32 >

この作品をシェア

pagetop