【短】卒業~ずっとキミが好きでした。~
アイラちゃんはうちのクラスでも目立つグループのリーダー的存在で、とてもハッキリとした顔立ちをしていて、背も高くてスラッとしている。
思ったことはなんでもストレートに言うし、私とは明らかに違うタイプだ。
だけど、柏木が好きになったのは、私とは違うタイプのアイラちゃんだったわけで……。
私は、もしかしたら柏木も自分に気があるんじゃないかって思ってしまったことをとても恥ずかしく思った。
柏木がアイラちゃんに小学校時代に告白したという話は、あっという間に学年中に広まって。
柏木は女子から人気があったから、アイラちゃんを羨む声や僻む声を耳にすることも多かったけど。
私が知りたいことはただひとつだけ。
アイラちゃんに対する、今の柏木の気持ちが知りたい……。
だけど、そんなこと柏木本人に聞くこともできなくて。
毎日モヤモヤとしながら過ごしていた。
そんなある日。
英語の授業中に、「ちょっと教科書貸して」と、柏木は自分の教科書と私の教科書を取り替えた。
私は意味が分からなくて首を傾げながら柏木を見ていると、柏木は何やら私の教科書に一生懸命何かを書いている。
また、パラパラ漫画でも書くつもりかな?
それとも、お得意の英語の先生の似顔絵でも書いてるとか?
まぁ、いいや。
私は、取り替えられた柏木の教科書を見ながら授業を受けていると。
「はい」
しばらくして返された教科書。
開かれたページにふと視線を落とすと。
そこには、“四角の枠の中に自分の好きな物や人、好きな食べ物などの絵を書き、その絵について英語で話してみましょう”と書かれていて。
そして、書かれていたのは、柏木の似顔絵。私にもわかるようにか、似顔絵の下に“shouta”と名前まで書いてある。
……え?
私は、柏木がここに自分の似顔絵を描いた意味がわからなくて柏木の方を見た。
だけど、柏木は左頬に顔を乗せて下を向いてしまっているから、柏木の左側にいる私からは表情を確認することができない。
私は、もう一度自分の教科書の方に目を落とす。
私の好きな物(人)を書く枠の中には柏木の似顔絵。
これだと、私の好きな物(人)は、柏木ということになる。