なんで俺じゃあかんねん
ずっと俯いてた彼女が顔をあげた。

「将来のことは、正直まだ決めてない。

ピアノをずっと弾き続けたいとは思ってるけど
正直、私の性格で今後世界を相手にピアノでやっていけるか、不安やし。

けど、たくさんの人にピアノを聞いてほしい・・・
大好きなピアノをみんなにも好きになってほしいし、私のピアノで少しでも喜んでほしい。
今は趣味のつもりやけど、もしかしたら今後周りが言うようにピアニストになりたいって思うときがくるかもしれへん。

でも、今しかできないことは人並みにやりたいって思う。
きっと、他の人に比べたら甘い考えなんやと思うけど、でも、坂井くんも言ってくれたように、それでもしピアニストの道がなくなっても、自分で選んだことなら納得できると思う。」

「うん。」

雅さんの気持ちを聴いて、少しほっとした。

才能があって、天才と言われている彼女も、俺とそんなに変わらない。

こうなりたいなってぼんやり考えてても、今も楽しみたいし。

普通の女子高生だ。



「それでええやん。

俺らなんて、まだ高校生なんやし、それくらいが普通やと思う。」

雅さんは、今まで普通とはちょっと違う経験をしてきたのかもしれない。

その才能で、人よりもきっちりとレールをひかれてしまったのかもしれない。

けど、それでも雅さん自身は普通の女の子だ。

「ちょっとくらいわがまま言っていい。

今、取返しつかへんことしたって思ってるかもしれんけど、そんなことない。

もう一回、お母さんと話してみたら?

こうしたいって真剣に言って、ちゃんと責任持ってることも言って
雅さんの気持ちを話してこいや。」

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