あたしの知らないあたしを写して。
あたしの知らないあたしを写して。
カメラのレンズが、じっとあたしを見つめている。
ここは昼下がりの海辺。
あたしは海をバックに立ち、カップルや家族連れが楽しそうにそれぞれの時間を過ごす中、かなり困り果てていた。
「…あのさ、笑ってくれない? シャッター切れないんだけど」
「そ、そう言われても…」
カメラを構えているのは、彼の友人の篠崎さん。
彼の誠とは同級生で、あたしより1つ年上、社会人になった今でも趣味でカメラを続けている。
そしてあたしの密かな憧れの人。
事の発端はこう。
「今度の写真コンテストは人物写真がテーマで、そのモデルをあたしにしてもらいたい」
篠崎さん直々のご指名だった。
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