あたしの知らないあたしを写して。
 
「じゃあ、俺を想って笑って」


すると、ふいにカメラを下ろした篠崎さんがそう言う。

もしかしたら、篠崎さんもまた、誠と同じようにあたしの気持ちに気づいているのかもしれない。

冗談めかしているわけでもなく、罪悪感の入り混じった、けれど真剣な目であたしを見つめていた。


それきり篠崎さんは口を閉じ、再びカメラを構えてしまった。

けれど、笑うどころか瞬き一つできないあたしは、ただカメラを見つめ返すだけ…。

長い沈黙が続く。

すると。


「欲求不満、って顔してる」


カメラを構えたまま、篠崎さんが諦めたように呟いた。

レンズ越しの彼の目に、何もかもを見透かされている。

あたしが本当に笑えるのは、その欲求が満たされたとき―…。
 

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