密の味~色づく唇~


「そんな顔して。誘ってるの?」


……聞き違い?


思わず彼を凝視する。


「? なぁに?」


問いかけられ、私は思った事をそのまま口にした。


「秋津さんって男の人が好きなんじゃ……」


「どうしてそう思うの?」


「だって口調が……」


もごもごと口ごもっていると。


秋津さんは柔らかく微笑み……。


「これは予防線」


「予防線?」


「女性客に変に気に入られないようにしてるの」


昔、色々あったから。


困ったように、そう呟く秋津さん。


改めて、私を見つめ――。

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