贖銅(ぞくどう)の刑
そう言う訳で、助手席に座る千歳とは対照的に、運転席に座る実(みのる)は、事情を分かっていながらも、その渋滞に巻き込まれてしまった事にイライラしていた。

「くそっ!悲劇のヒーローが今正に、敵陣に乗り込んでいこうって場面で、渋滞に巻き込まれるなんて、笑い話にもなりゃあしねえ!

…おい、さっきから何やっているんだ?

おい、千歳!」

「…そこのあなたも、そしてあなたも、みんなみんな、素敵な相方と一緒で、幸せなのね!

私もよ~!バイバーイ!いつまでもお幸せに!バイバーイ…」

「おい!みっともないから、止めろ!恥ずかしいだろうが!

何見ず知らずの女達に手を振って挨拶してんだよ!」

実にそうたしなめられた千歳は、実の方を向いて、満面の笑みで答えた。

「だって、今の私、すごく幸せなんだもの。

実君にさっき、あんなに激しく愛してもらったから…

あ~っ!ほらほら、見て見て、消防車!私達の車をすれ違っていったよ!

あれって、私達が出てきた方角に進んでない?

あははっ!」
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