贖銅（ぞくどう）の刑

それを聞いた実は、家から出てきた時の事を思い出し、心を大きく乱した。

実は、気を落ち着かせる為、信号待ちの間に、運転席側の窓を開け、口にくわえたタバコに火をつけようと、ライターを探すが見当たらない。

「あ、あれ？ど、どこへやったん…うわっ！」

実は、驚きの余り、思わず口にくわえたタバコをポロリと落としてしまった。

なぜなら、実の気がそれている間に千歳が、自分の顔の真ん前にまで顔をよせて、相変わらずの笑顔で、手にしたライターを差し出していたからだ。

千歳は、実が落としたタバコを拾い上げ、それを実にくわえさせると、手にしたライターの火をつけた。

「私が、つけてあげる…」

シュボッ、と、ナイフの様に鋭い音を立てて、ゆらゆらと燃え上がる、炎。

その炎越しに見えるは、笑顔に隠された、千歳の真の素顔。

実は即座に、その真の素顔の正体を理解した。