贖銅(ぞくどう)の刑
そして、おふくろの叫び声の後の、何かがぶつかった音は、おふくろの死体があったここの柱が傷ついている事から、千歳の母親と組み合った際に、おふくろが頭をぶつけた音だろう。

そして、あわただしくここから遠ざかっていく足音は、お前の母親、祐子の物…

もう、おふくろはお前の母親に復讐が出来なくなってしまった。

散々、俺の事を苛めてきたおふくろだが、今は哀れに思う。」

そう言って、実は上半身裸になった。

その身体中にある、母親の茜から受けてきた、数々の虐待の傷跡が痛々しい。

「…おふくろと千歳の母親の写ったあの笑顔の写真を見て、確証はなかったが、面と向き合って親子としての会話が出来れば、またあの笑顔を取り戻し、俺にもいつか笑いかけてくれるんじゃないかって考えていた。

でも、家に帰っておふくろが、すでに物言わない死体になってたんじゃあなあ…

結局あの写真が、俺が生まれて初めて見た、最初で最後になった、おふくろの笑顔。

まあ、あのICレコーダーの内容からすれば、それも夢だったんだろうけれど…

どっちにしても、俺はそんなささやかな夢を、お前ら母娘に引き裂かれる運命だったんだ。
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