。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。



そのあと俺たちはほとんど無言で店を出た。


言葉も交わさず夜の道を歩いた。



時折風に乗って香ってくる匂いは……


俺は響輔に近づいて、こいつの黒い髪の匂いをくんくん嗅いだ。


「何してはるんですか…」


響輔がいぶかしむように身を後退させて


「サンマの匂いがするなー思うて」


「さすがですね。リコさんちでいただいてきたんですよ」


あーそれで、ねぇ。


「あー…もぉ!」


響輔は突然唸りだして、髪をがしがし。


ど、どないしたん…





「どうしてあなたは…!」





響輔は俺の方を見て切れ長の目尻を吊り上げた。


また怒らせた??


と、不機嫌響輔にちょっとビクビクしたが、






「どうしてあなたは、俺の怒りをそう簡単に鎮めるんです。


どうして怒らせてくれへんのです。



どうして戒さんは




戒さんだけは、俺の本心いつも見抜くんですか」





予想外の言葉に俺は目をまばたいた。




「いっつもそうや。俺が一人で怒ってても戒さんは何事もなかったかのように普通通り。


なんや、俺が怒ってるんがバカらしなってくる。




でもそうやって戒さんが何でもないように接してくれるから、


俺の本心言わんでも分かってくれるから




正直、楽なんや。





戒さんの言うた通り、俺は逃げてる」






響輔―――……










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