。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。




「戒さん―――…」


響輔はおずおずと俺の背中に手を回してきて遠慮がちに俺のTシャツを握った。


最初は本当にぎこちない手付きだったのに、やがて響輔はぎゅっと俺のTシャツを力強く握ってくる。



「俺、リコさんを傷つけた」


くぐもった声でぽつりと呟き、


俺は無言で頷いた。


「恋愛なんて傷ついてなんぼや。俺かて朔羅に対しては不安でいっぱいやもん」


そう言う意味では






龍崎 琢磨は





一体心にどれだけの傷を負っているのだろう。


愛して…


愛して




愛し抜いたたった一人の女を手放さなければならないアイツの気持ち―――



「川上は失恋ぐらいで死ぬような女やない。あいつは強いし大丈夫や。


響ちゃん、さっきは逃げてる言うてごめんな。



俺、お前はごっつぅ強い男やと思うよ?」




響輔は



権力にも愛情にも屈しず、自分の気持ちだけに向き合って答えを出した。



「俺、お前がそう言う男で…幼馴染で誇らしいわ」


そっと言うと響輔のTシャツを握る手に力が加わった。


ふっと喉の奥で笑う声が聞こえたが、その声は周りの…都会のけん騒ですぐにかき消された。


「ねぇ…見て!あの子たち抱き合ってる!♪」


「や~ん!!可愛い!★美少年同士だから絵になる!」


…………


どっかで聞いたような噂話だ。(答え:KYOSUKEです♪空港にて)



俺たちは思わず顔を見合わせて慌てて離れた。


考えたら街のど真ん中だし??


こんなとこタクさんにでも見られたらまた話のネタにされる!


知り合いが誰も聞いてませんように、見てませんよ~に。


と思ってた矢先、



プップー…


道路に停まった車がクラクションを鳴らし、俺たちは同時に音の鳴った方へ目を向けた。





「やぁ。こんばんは。



イケナイ浮気現場を目撃★ですね。なかなか貴重な龍崎家のゴシップネタ、ありがとうございます。


ふふっ」





白いベンツの窓からにこやかな顔を出して手を振っていたのは




変態ドクターだった。




知り合いに見られませんように…て願ってたばかりだったのに、


一番見られたくないヤツに見られちまったよ!!





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