。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「寝てる場合やないて。今―――大事なときやし。
大したことやあらへん」
戒が起き上がろうとしたが、あたしは強引に戒を布団に押付けた。
「寝て!あ、あたしも一緒に隣で寝るから!」
あたしが布団に入り込むと、戒は大きな目をぱちぱち。
「あたしはどこにも行かない。だから今は寝て」
あたしが戒の体をぎゅっと抱きしめると、戒はあたしの腕をそっと握り返してきた。
「………ほんま…俺、かっこつかん男…かっこわるぅ」
戒は恥ずかしそうに顔をあたしの腕に埋める。
「かっこ悪くないし!」
具合悪いのに……無理してすることでもないし…
「きょ、キョウスケの代わりになってる?」
あたしがおずおずと聞くと
「あいつ以上……」
戒は深く吐息をつき、あたしをさらに抱きしめてきた。
「朔羅の肌て気持ちええな。
さらさらでふわふわ柔らこうて……
あったかい」
戒があたしの腕の中で長い睫を伏せて目を閉じる気配があった。
「朔羅の香り―――…俺、独占してる」
「うん」
「何や、桜に抱かれてるみたいや」
「うん…」
「はじめて会うたときのこと覚えてる?」
「うん」
覚えてる―――
「死体男」
あたしがちょっと冗談っぽく笑うと、
戒もあたしの腕の中で小さく笑った。