。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
な…何か言わなきゃ…
焦っていると、タイガは何を思ったのかスーツの中をごそごそ。
一瞬ハジキを出したのか思って身構えたが、タイガが出したのはハジキではなかった。
「探しものはこれかい?」
タイガが取り出したのはラム子のぬいぐるみだった。
嘘だったが、
「あ…そう!それっ!!」
受け取ろうと手を出すと、タイガはそのラム子をぱっと引っ込めた。
「……な、何だよ、返せよ」
ちょっとタイガを睨むと、タイガは無表情だった顔に険しい何かを浮かべた。
ドキッ
な、何……
「さっきも聞きたかったんだけど、これをどこで―――?」
何でそんなことを聞くのか分からなかった。
だってただのぬいぐるみだろ?
「別にどこだっていーじゃん。早く返せよ」
早口に言って再び手を伸ばすと、
タイガは今度はあっさりとラム子をあたしの手の中に。
「このヒツジから香ってきたのは、円周率の香りだ。
危険な香りだよ。
どこの誰にもらったのか分からないが、今度は迂闊に近づかない方がいい」
円周率―――……
タチバナの……
「気をつけたまえ」
タイガは真剣に言ってあたしの手の中にラム子を握らせ、くるりと踵を返した。