。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
責めないよ―――
「響輔さぁ…あいつには立場とか気持ちとか色々複雑なもんがあるみてぇだし。
俺気付かなかった、
あいつって色々複雑だったんだな」
「お前ほど単純とは思ってなかったけどな」
「単純言うな。俺は少なくともお前よりは複雑なことを考えられる」
ぽこっと頭を軽くはたかれ、あたしは叩かれた場所を撫で撫で。
これほど近づいた戒はあたしにキスすることなく、そっと離れていく。
またもビールを飲みながら
「俺、あいつを傷つけた。
深く考え無しに言いたいこと言って……」
戒はビールの缶に口を付けたまま、また目を伏せる。
戒―――……
あたしはすぐ傍まで移動して戒のふわふわな髪をそっと撫でた。
「人は誰でも…誰かの近くにいれば、楽しいことだけじゃなく
傷つけることだってある」
実際、生まれたときからすぐ近くにいて、いつも守ってくれた
叔父貴のこと、
―――あたしはたくさん傷つけた。
傷つけられたこともある。でもそれでも離れないでいるのは
互いに、一言で言い表せない深い愛情があるからだ。
『愛してる』
あたしは叔父貴のあの言葉を拒否した。
叔父貴を―――傷つけた―――……
でも叔父貴は変わらずあたしに接してくれている。
変わらず深い愛情を―――
「そうやって―――関係を深めていくものだし
そこで離れたら、その絆はホンモノじゃないんだよ」
あたしは目を伏せている戒の頭をぎゅっと抱き寄せると、
「うん」
戒はあたしの腕の中で小さく頷いた。