。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「死んでへんて」
「でも脈がなかったよ」
「仮死状態や」
「ね、寝るときはちゃんと息しろよな!
じゃないとあたしびっくりし過ぎてみんなを呼ぶかも」
「そしたら今度こそ言い逃れでけへんなぁ。
俺が虎間やて」
戒は大きく深呼吸して
「バイト行ってないのに何や疲れたわ」
と小さく囁き、あたしは戒の頭をぎゅっと抱き寄せて
「寝な…」
あたしが言うと
「起きたらお前がおらへん…って無しやで?」
あたしに言い聞かせて、あたしが苦笑いで
「お前が起きるまで傍に居るって」と答えると
戒は安心したように頷き、今度こそ静かになった。
あたしは戒の頭をそっと撫でながら
戒の耳元でそっと囁いた。
「~♪おやすみなさい お眠りなさい
バラと撫子に囲まれ」
小さい頃母さんが歌ってくれた子守唄。
あたしが風邪とかひいて熱が出ると、母さんは決まってこの子守唄を歌ってくれた。
ブラームスの子守唄だとか…
あの有名な「ララバイ」だな。
「~♪布団の中へお入り
朝が来て 神の意志により
貴方はまた目覚める」
誰に聞かせるわけでもなく、あたしの歌声は戒の部屋の中で漂い、窓の外では蝉時雨の音…
戒の髪を撫でながら、戒の寝息に耳を潜めて
どうか…
どうか戒がこれ以上悩まないように。
これ以上一人で抱え込まなくてもいいように。
あたしはそんな願いを込めて戒の髪を撫で続け、
やがて自分自身も眠りに入った。