。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
女の人はあたしに支えられながら目をぱちぱち。
「謝れっつうのが聞こえなかった?オバサン」
ガムをクッチャクッチャと下品に噛んで、男が女の人を覗き込む。
その姿を見て
ブチッ!
あたしの中で何かがキレた。
「てやんでぃ!!
ぶつかってきたのはてめぇらの方だろうがっ!
この人に謝れっ!」
例のごとくあたしが怒鳴ると、
「はぁ?」と男たちが顔を歪める。
「りゅ、龍崎さん!」
新垣 エリナが不安そうにあたしの肩を揺さぶったが、ここで謝るのは筋違いってもんだ。
江戸っ子の名がすたるぜ。
「何、あんた」
男たちが迫力のない睨みで舌打ちをしてあたしたちを眺めて、すぐにその顔色を変えた。
にやにやと下品な笑みを浮かべて
「いてっ!痛ぇよ!!骨が折れたっ」
一人が大声で喚きだした。
まだそれほど遅い時間帯じゃなかったから、人通りもたくさんある。
だけど、この光景を見てあたしと目が合った通行人たちは、顔を逸らしそそくさと歩みを速めた。
関わりたくねぇのは分かるがよ。
誰か止めねぇんかよ。
「それぐらいで骨折れるたぁどんだけカルシウム足りてねぇんだよ。
骨粗しょう症じゃねぇの?」
あたしが言ってやると、
「なんだ、このクソアマ。可愛げねぇな」
と、痛がってる(フリ)をした男とは違う男が言って、
「おい。この女以外二人には来てもらおうぜ。
治療費についての“話し合い”だ」
男がにやにやして女の人と、何故か新垣 エリナの手を掴んだ。