。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
女の人はほつれた黒髪をちょっと直しながら、僅かに顔を伏せる。
「そやけども、明らかに悪いんはぶつかってきた男や言うのに
周りは何で何も言わへんの」
「みんな関わりたくないからですよ」
あたしがそっけなく言うと、新垣 エリナも顔を俯かせた。
「でも
お嬢ちゃんはちゃうみたいな。
ほんま、おおきに」
女の人はまたも微笑んで、そして手の中にあったメモがなくなっていることに慌てだした。
「いやゃわぁ。うち、メモをどこかに落としてしもたみたい」
「えっと…どちらにいらっしゃるつもりだったんですか?よければケータイで調べます」
新垣 エリナがケータイを取り出して、
「ほんま?助かるわぁ。
“龍崎グループ本社”言う場所なんやけど」
その言葉を聞いて、あたしは目を開いた。
「どないしはったん?うちの顔に何かついてる?」
と、女の人は不思議そうに首を傾ける。
「いえ!!あの…あたしたちも…そこへ行くところだったので、ご案内しますよ」
「ほんま?おおきに。いやぁ助かったわぁ」
女の人は本当に嬉しそうに手を組んで眉を寄せる。