。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「ねぇ、何でさっきの連中にしつこく構ってたのよ。
普段ならあんなの無視するくせに」
大狼の車でレストランに送ってもらっている最中、気になっていたことを鴇田に聞いた。
「単なるクリーニングだ」と鴇田はそれだけ。
クリーニング??意味が分かんないんだけど。
「青龍はこれから次の世代に代替わりするでしょう?
その為に組織の膿を一掃しておこうってわけサ」
運転をしながら大狼が分かりやすく説明をしてくれて、
「黙れ、お前は余計なこと言うな」
と助手席で鴇田は大狼を一睨み。
組織の膿を……?
ふーん…なるほどね。
次の代ってのは虎間 戒と朔羅の代ってことね。あの二人に明け渡す前になるべくきれいにしておこうってことか。
龍崎会長の命令に違いないわね。
―――……
結局、あたしたちは約束を数分遅れて、高級感漂う隠れ家的なフランス料理のレストランに到着した。
広いロビーで女が一人カウチに腰掛けていて、あたしたちの到着を目に入れると腰を上げた。
「翔、良かった。
遅いから何かあったのかと思ったわ。電話は通じないし」
胸元が大きく開いた黒っぽいワンピース姿。でも全然いやらしくなくてむしろ全身からかもし出す色気のようなものが上品に漂っていた。
小柄だけれど、口元にあるほくろが妙に色っぽい。
この人が―――…
鴇田の新しい妻。
「悪かった。衛は?」
鴇田はあたりを見渡して
「さぁ、来てないわよ」と女が少し不機嫌そうに腕を組む。
まぁ当たり前だよね。
新妻紹介の食事会だと言うのに実の娘と兄が遅刻だなんて。
あら??でもさっきドクターは先に着いてるみたいな口ぶりだったけど。
大狼……やっぱりあたしを見張ってたのね。
同じことを思ったのか鴇田があたしを見下ろしてきて、あたしは軽く肩をすくめた。
だが鴇田はそれ以上詮索することなく腕時計を気にして、
「あいつが遅刻とは珍しいが、仕方ない。食事の予約もあるし先に席に着こう」
鴇田はあたしと女をレストラン内に促し、不機嫌そうにしている女に腕を組まれても振り払う素振りは見せずに無表情にエスコートしている。
あたしはそんな鴇田から少しだけ距離をあけて二人の後をついていった。
何よ……
美人な女にへらへらしちゃって。
案内されたのは窓際の席で、薔薇なんかがきれいにガーデニングされている中庭を眺められる良い席だった。
中庭には小さなプールもあり、あちこちにオシャレなキャンドルが飾られていた。
白いクロスが敷かれた丸いテーブルは一人だけ空席で、
それでも鴇田はあたしを紹介しはじめた。