。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「キリ、紹介しよう。こっちが私の娘で
一結。
イチ、彼女はキリ…朝霧。龍崎会長の秘書を勤めている」
紹介されてあたしはぎこちなく頭を下げた。
「きれいな子ね。本当にあなたと血がつながってるの?」
とキリと呼ばれた女の人が色っぽい笑顔を浮かべ、そして友好的なしぐさで手を差し出してくる。
「はじめまして、一結さん。
朝霧と申します。キリとお呼びくださいませ」
「…はじめまして。よろしくお願いします…」
親の再婚相手を紹介されるなんてはじめてのことだから、どうやって対応すればいいのか分かんない。
あたしはぎこちなく頷いて、握られた手をすぐに離した。
この人は“お義母さんと呼んでください”とは言わなかった。
あたしの気持ちをどこまで知ってるのだろう。
もしかしてそっちもあたしを“義娘”だと思いたくないのかも。
「ワインでも頼もうか」
鴇田がメニュー表を開いて、
「予約した今日のコースのメインディッシュは魚だから白の方がいいじゃない?
私はお肉が好きだけど翔もイっちゃんもお魚が好きだと聞いたから」
イっちゃん……親しみを込めてそう呼ばれてあたしは顔を上げた。
馴れ馴れしいのがちょっと苛立つ。
「アレルギーはないって聞いたけど、嫌いなものがあったら言ってね。
お酒は少しなら大丈夫かしら」
キリさんははきはきと言ってにっこり笑顔を浮かべる。
龍崎会長の秘書って聞いたし、デキる女には間違いないみたい。しゃべり方にソツがないし頭の回転も早そう。
ついでに……リサーチ力も長けている。
おっちょこちょいのママとは―――180度違う。
鴇田が話したに違いないけど、
勝手に何でもかんでも言ってんじゃないわよ。
何だかちょっと腹が立ってテーブルの下で鴇田の膝を蹴ってやった。
鴇田は一瞬だけ眉をしかめたものの、これと言って何も言わず…表情もほとんど変えずにメニュー表に向かっている。
そのときだった。