。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「付き合ってはない。
あたしの片想いだから……」
イチはぎゅっとクマを握り遠くをぼんやりと眺める。
「―――…あいつのどこが好きなんだ…?」
思わず聞いてしまって俺は慌てて口を噤んだ。
こんな―――……娘を心配する父親みたいな…
いや、血縁だけで言えば父親なんだが。
俺自身こんな言葉をイチに向ける日が来るなんて思ってもみなかった。
何て言うか、今まで無関心だったから。
イチは俺の意見に「何でそんなこと聞くのよ、父親面しないでよ!」といつもなら怒鳴ってくるだろうに
俺の言葉に素直に答える。
「どこがって…分かんないよ。
強いて言えば……簡単じゃないところ、かな」
「簡単じゃない男なんてやめておけ。
お前が―――
傷つくだけだ」
小さくそう言うと、今度こそイチは気を悪くして怒るか黙り込むか、と思ったが
「ねぇ。あんたがあたしぐらいのころ、
親にどう接してた?」
と違う質問を投げかけてきた。