。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
それも愛―――か。
そうなのかもしれない。
―――もう誰も愛したくない。
誰も失いたくない、
と思っていたが……俺はやはりどこかで求めていたのか。
女だったら…キリじゃなくても欲求のはけ口になる者はたくさん居るが、でも俺が共に歩んでいきたいと思ったのは
キリだった。
(それに性欲だけで言うと俺よりあっちの方が激しいからな。俺の方がダウンしそうだぜ)
『翔。
私、考えたの。レストランから帰るタクシーの中で。
結婚は見送った方がいいんじゃないかしら、って。イっちゃんだっているし』
半分考えていたことだ。
別れ際のあのキリの表情…悩んでいるようにも見えた。
『でも…
やっぱり私、あなたと結婚したいわ。
イっちゃんを見て思ったの。
あなたは大切な宝物を持ってる。それも二つも』
二つも―――……?
「意味が分からないな」
俺はグラスを傾けてウィスキーを一飲み。重い樽の香りが鼻腔をくすぐり、くしゃみが出そうだった。
『惚ける気?まぁいいわ。
とにかく、私も宝物が欲しいの。
“家族”と言う宝物がね。
あなたとの子供が欲しいわ、翔』