。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。



『カズノリーーー!がんばって!』


ビデオを撮っている人の声だろうか、明るい女の人の声が聞こえてその男の子は恥ずかしそうにバットを握っている。


バット―――…!


タイガの車に積んであった。


あれと同じものか確認する間もなく、カズノリと呼ばれた男の子は飛んできたボールに体制を整え、きれいなバッティングフォームでボールを高く飛ばした。


『いけぇ!カズノリっっ!!』


遠くで同じ年頃の男の子と思われる声が響いている。


『カズくんがんばって!!』


ビデオを撮っているだろう女の人の声も。



「「…………」」



あたしたちは思わず顔を合わせた。


何でこんな動画が―――……



カズノリと呼ばれた男の子が打った球が一瞬だけ映し出され、そのボールはグラウンドのネットを越え、見事なホームランを打った。


次の瞬間、その男の子がベースを全力疾走で走っている姿へと変わる。


『カズくん、やった♪』


女の人の声が聞こえて、見事ホームを一周してきた男の子…カズノリくんが野球帽を深くかぶりなおし照れくさそうに小さく笑ってぎこちなくピースサイン。


キャップのせいで顔ははっきりとは見えない。




―――動画はそこで終わっていた。






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