。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「あいつ……タイガの車にバットが積んであったんだよ!」
あたしは思い出して人差し指を立てると、
「バット…?」と戒は目をぱちぱち。
「この動画じゃはっきりと見えないけど色とか…あんな感じだった」
「てか、おめぇいつタイガの車に乗ったってんだよ」
戒は違った疑惑を浮かべてあたしを睨んでくる。
は!しまったぁ!!
慌てて口を覆ったがもう遅い。
「お・ま・え・は!!!何でほいほい怪しい人物の車にそう簡単に乗るんだよ!
あれほど気ぃつけろ言うたやろ!!」
ビシっと指さされてあたしは戒の迫力に思わず後ずさって目をぱちぱち。
「で…でもぉ危険なことは何ひとつなかったよ」
あたしはリコが電話の向こうで泣いていて分けもわからず心配だったから、偶然近くに居たタイガの車に乗せてもらって、その場まで連れて行ってもらったとあたふたと説明。
「何もされなかったんだな」
戒は念押しのように聞いてきて、
「車の中ではな。でもリコの前でチューを迫られてあたしは思い切り殴ってやった」
「はぁー」
戒は大きなため息を吐き、ガクリと肩を下げる。
「頼むから一人で危険なことはするな」
不機嫌そうに言われたけど、でも戒はあたしのこと心配してくれてそう言ってくれてるに違いないのだ。
「ごめん……心配掛けて」
しょんぼりとうな垂れると、
「いいよ、お前が無事で何より…それよりそのバットがタイガの車に積んであったってのは間違いないのか?」
戒は眉を下げてあたしの頭を撫で撫でしながら聞いてきた。
「あの動画のバットと同じものか分からないけど、タイガはそのあとこそこそ電話してたよ。
“あのバットを積んだのは君か”って、“証拠になり得る”とかも」
あたしは思い出せるだけの記憶を穿り返して戒に手振り身振りで説明。
でもその手つきを途中で止めた。
「その相手も―――もしかして伊予原 椿紀さんなのかも」