。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
男は戒の拘束から逃れても、腕を押さえてのた打ち回っている。
「お前…腕折ったんか…?」
恐る恐る聞いてみると、
「ほんまは腕だけや足りひんけど、
女の前やし、あんまむごいことでけへんからな」
戒は額に流れた汗を乱暴に腕でぬぐった。荒く肩で息をして、疲労しているのが分かった。
その横顔が、
その細められた視線が
言い知れない威圧的な殺気を帯びていて―――
ドキリと心臓が音を立てる。
戒は男を立たせて、さっき引き抜いたベルトで腕を拘束し
「朔羅、お前がさっき放ったハジキ、持ってきて」
そう言われてあたしはぎこちなく頷き、放り投げたハジキを取りにいった。
幸いハジキは遠くへは飛ばされていないようで、それを拾い上げると
それは思いのほかずっしりと重く、真夏の蒸し暑い真昼間に感じる熱気の中、妙に冷たい鉄の感触がした。
ハジキなんて触ったのははじめてだ。
叔父貴のを見たことあるけど、あくまで見ただけだし。
またもドキリと心臓が鳴り、戒に手渡すのをやめようか躊躇していると、戒の腕が伸びてきてあっさりとそのハジキを奪っていった。
戒は手馴れた仕草でマガジンを取り出し、
「P7か。装弾数は十三発。全部残ってるな」
装填されている薬莢を確認してまたもマガジンを押し込めた。
ガチャッ
手馴れた様子でスライドを引くと、その銃口を座っている男に向けた。