。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「襲ってきたのは男二人。タトゥーとかは確認でけへんかったけど、ヤツらは白へびに雇われた言うてたわ。
それもかなり強い。軍隊出身かもしれへん」
軍隊―――……
そうかも。あの戒が手こずってたぐれぇだし。
ハジキを持っていた理由も頷ける。
「その後、白へびが口封じに殺したに違いないよ!
け、警察に行ったほうがいいんじゃないか!」
正直あたしゃサツなんて大嫌いだが、四の五の言ってられねぇし。
それに…
殺人現場を目の前で目撃しちゃったんだよ!
「サツに垂れ込んでも、凶器もないし死体もない、その状況では真剣に取り合ってくれませんよ」
キョウスケが淡々と言い、
そ、それもそうか、と納得。
「お前は信じてくれるんだな…白へびが現れたこと。男に襲われたこと」
キョウスケを見上げると、
「お嬢一人なら夢を見たと思うんですけど、戒さんも一緒なら」
おい!キョウスケっ
あたし一人じゃ信用ならねぇって言いてぇんか!
「…ってー、あいつら派手にやりやがって」
戒は男の攻撃で打ったわき腹を押さえて、キョウスケからハンカチを受け取ると、カットソーをめくり上げてその場にそっと当てる。
戒の引き締まったわき腹には、確かに男が攻撃したと思われるあざが生々しく残っていた。
夢―――……なんかじゃないよ。
あたしもバカぢからの男に首を絞められた。
あたしは絞められた場所をそっと手で押さえて、今更ながら青くなった。
一瞬の判断が誤ってたら今頃本当の天国にいってたかも。
戒は痛みに顔をしかめながらもよろよろと立ち上がり、ご本堂の入り口をきょろきょろ。
「空薬きょうもねぇ。後始末も周到だな。
間違いねぇな、プロの仕業や」
はぁ
戒は大きくため息を吐いてご本堂の石段に腰掛ける。
“後始末”ってところに嫌なものを感じて、あたしは心臓の辺りをぎゅっと押さえた。
「で、でもさ!あたしたちが生きてるってことは、男たちも生きてるってことじゃね?
きっと自分たちで立って帰っていったんだよ!」
どんな事情であれ、目の前で人が殺された―――
その事実を認めたくなかったのかもしれない。
だが、逃避したいあたしの目の前で戒はどこまでも現実的。
「それはねぇな」
あたしの意見をきっぱりと否定した。