。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
急に静かになったあたしに戒はちょっと笑いかけると、あたしのおでこにチュ。
「冗談だ」
「冗談て顔じゃなかったぞ。てか、手退かせよ。
てか何なんだよ!こんなところまで引っ張ってきて」
あたしは戒の拘束から逃れようとするも、戒は両手を壁についたまま、開放してくれる様子はなさそうだ。
戒は手をついたまま、
「超緊急会議だ」
超緊急会議……って…今回の会議室はトイレの個室!?
「キリさんがシャワー浴びた理由さっき聞いただろ?」
突然そう切り出されて、あたしはぎこちなく頷いた。
「うん…それが何か…」
「いや、タイミング良過ぎかな、って気がしてさ。
キリさんが意図的にオピウムの香りをまとってあの神社に来ていたら?」
「キリさんが……何で…?」
言ってる意味が分からなくてあたしは戒の腕の中で目をぱちぱち。
「俺たちの疑いを彩芽さんに向けるためだよ」
「ちょっ!ちょっと待って!
だってキリさんは場慣れしてないカタギも同然だってお前が言ったろ?」
何だか混乱してきた。
あたしはちょっとだけ戒の胸を押しやり、考えを整理しようと額に手をやる。
その手を戒はやんわりと握り、またも壁に手をつくとあたしを見下ろした。
「でもお前は狙撃手の姿を見た。女だったのは間違いないんだろ?」
そう聞かれて、大きく頷く。
だって本当のことだもん。見間違えるはずないよ。
「で、でも…!彩芽さんじゃなかったらキリさん、て考え方おかしくない!?
キリさんがあたしら襲って何の得があるってんだよ」
「キリさんが白へびだとしたら―――…?
白へびに雇われた男たちが殺された。これ以上情報の漏洩を防ぐためだ。
立派な動機だよ」
動機―――……
嫌な響きに、あたしは思わず俯いた。
もしそれが本当なら
キリさんがあたしたちを撃ったってこと……
あの優しいキリさんが―――……
お母さんみたいに思ってた人なのに。