。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
響輔は財布の中からUSBメモリを取り出し、ついでに自分のケータイの電池パックのカバーを開けた。
中から小さなマイクロチップを取り出す。
確認するわけでもなく普通のチップではない。
「お前いっつもそんなん持ち歩いてるの?」
「“備えあれば憂いなし”ですよ」
響輔が含みのある言い方をして目を細めると、そのカードをスーツの胸ポケットにしまった。
「明るい家族計画とは程遠いがな」
「ある意味家族計画ですよ。スネークに青龍の血を根絶やしにされたら、次世代は終わりですからね」
響輔がインカムを耳に装着して、俺は集音マイクに向かった。
「こちら22階のダブルフロア。異常なし。
見張り交代の時間だ」
それだけ言うと、
『了解、すぐに三名向かわせる』と誰か分からんが指令がきた。
俺は集音マイクのスイッチを切って、ベッドに放り投げた。
「現在このフロアに居るのは三人のガードマンたちだ。そのうちの一人はここで伸びてるから
残り二人」
廊下に怪しげな男を見張りに置くぐらいだ、どうせこのフロアまるまる貸しきってるに違いねぇな。
「了解。交代が来る前に片付けましょう」
俺とガードマンに扮した響輔が堂々と部屋を出ると、すぐに違うガードマンが近づいてきた。
ありがてぇことに監視カメラが回っていない死角だ。
「待て、どこへ行くつもりだ」
俺の肩を乱暴に掴み、振り向かせる。
「ちょっと喉が渇いちゃって~♪自販機ないかな~って」
「ルームサービスで頼め。部屋から出るなと言われてるだろう?」
「あんまりしつこいんで、連れて行こうかと」
偽ガードマンの響輔が説明したが、
「出るな、と言ってる」
ガードマンは短気にハジキを取り出し、両手で構えると俺に向けてきた。
ちっ
融通が利かねぇクソ真面目なヤツだな。
内心で舌打ちしながらも
「すみませぇん」
「連れて行け」
響輔に指図すると、
「連れて行くのはあんたの方や」
ガードマンの背後に回った響輔が男の後ろから羽交い絞めにするように首に腕を回す。
俺はその隙にガードマンが向けたハジキのスライドを掴み、撃鉄を起こせなくしながら男の手首を捻り上げ、
響輔が手を離した隙にガードマンを後ろに向かせた。