。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「イヤホンは髪で隠れる。
マイクも小さなものだし、ポケットに忍ばせておけば大丈夫。
マイクのスイッチは切るなよ?
危なくなったら、パソコンは諦める。
お前の身の安全が最優先だ」
本当は行かせたくない。
戒の琥珀色の瞳がゆらゆら揺らいでいて、そう語っているように思えた。
「大丈夫だよ、
だってお前らがついててくれるから…」
あたしは戒の手の上からそっと手を重ねて、戒を見上げた。
「もう時間です。あまりぐずぐずしてると怪しまれる。俺は先に出ますよ、戒さん」
キョウスケがそれだけ言って、背を向け廊下に出た。
「あいつが…龍崎 琢磨がお前に危害を加えることはないだろうが、
危険を察知したら、中止を言い渡せ。
俺たちは、部屋の外で待機してる―――」
戒は眉を下げて、内線電話の受話器を手にとりあたしに向けてくる。
部屋の番号をプッシュして、
叔父貴に連絡しろ、とのことだろう。
「絶対に助けるからな」
戒は小声でそれだけ言うと立ち去ろうとした。
『はい』
電話の受話口から叔父貴の応答する声が聞こえる。
あたしは立ち去ろうとする戒の腕を引き、送話口を覆いながら背伸びした。
必ず成功させる。
そうゆう意味で戒にキスをすると、戒はびっくりしたように目を開いていたものの
数秒の口付け後、あたしの頭を軽く撫で今度こそ部屋を後にした。