。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
ギクリ
一瞬顔が変な風に固まった。
も…もしかしてあたしが喋ってたこと聞こえてた!?
ドキンドキン…と心臓が鳴り思わずぎゅっと胸元を押さえる。
「ど、どうしたの…?」
思わず聞くと、
「遅いからどうしたか、と。冷蔵庫の中のものが気に入らんようだったらルームサービスでも取るか?」
叔父貴はあたしの不審な行動を疑問に思った様子を見せない。
背中に何かを隠し持っているようで、真剣な目であたしを見下ろしていた。
セットを崩した前髪が無造作に乱れていて、あまり見慣れない姿にドキリ…とする。
「何飲むか悩んでた……
ところで…な、何隠してんのさ!」
あたしは冗談ぽく笑って叔父貴の後ろを覗き込もうとしたけど、叔父貴はさっと移動してまたも背中で何かを隠す。
「ま…まさかハジキとかじゃねぇだろうな…」
この状況ならあり得るし、いきなり向けられたどーしよ!
『大丈夫だ、あいつがお前にハジキを向けることはない。いつも通りに』
戒の声がイヤホンから聞こえてきたけどー…
いつも通りって。
「ハジキが良かったか?」
からかうように低く言われて、あたしはむっと唇を尖らせた。いつも通りっちゃこれだしな。
でも
叔父貴の声もいつも通りで優しく耳の奥をくすぐる。
何だか昔に戻れたみたいで、あたしもいつになく素直になった。
「違うけどぉ」
ちょっとむくれてアップルジュースのふたを外そうとすると、
バサっ
叔父貴は突如目の前に大きな赤い薔薇の花束を取り出した。