。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
衛の手当てにしばらく喚いていた会長だが、やがて薬が効いてきたのか大人しく寝息をたてはじめた。
俺は彼の布団を引き上げると、肩まできっちり掛けた。
「鎮痛剤の量を増やしておいたよ。
相当辛かったはずだ、倒れなかったのが奇跡だね」
やはりそうか―――
衛は新しい注射器のシリンジ(注射筒)を指で弾くと、針の先から透明な液体が飛び出る。
「俺に?だったら大丈夫だ」
そう言ってやると、
「君じゃなくて、お嬢さんに―――ですよ。
さぞや心を痛めておいででしょうから」
衛はわずかに眉を下げて無理やり苦笑い。
「お嬢は会長のこと疑ってない。会長と派手にやりあってそれどころじゃないだろうな」
「いつまで隠しておくつもりですか」
衛は無表情に針の先を見つめ、温度の無い声で聞いてきた。
「いつまで?そんな質問愚問だ」
俺は腕を組んで衛を見下ろすと、衛はため息を吐いて針にカバーを取り付けた。
「最期、まで―――に決まってンだろ?
それが会長のご希望だ」
「私は精神科医じゃないからはっきりとは言えないけれど、隠し通すのは無理だし、お嬢さんは傷つく。
彼女のことを考えるのなら…」
「黙れ、俺はお嬢のことより会長の方が大切だ。
余計なこと言うんじゃないぞ」
釘を差すと、衛は呆れたように吐息。
「患者のことは黙ってるよ。守秘義務があるしね。
ただ―――君はもう少し…お嬢さんのこと考えた方がいい。
イっちゃんのことも―――」