。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
あたしたちが話してるってのに、戒は起き出して来る気配はなかった。
「てかキョウスケは?」
きょろきょろと辺りを見渡すと
「いますよ、虎間のベッドに」
顎をしゃくられてあたしは戒の眠っているベッドに視線を向けた。
布団が盛り上がっていて、頭の先まですっぽり布団を被っているみたいだ。
てかキョウスケ…相変わらず存在感薄いな。
あたしはホットケーキにナイフを滑らせながら、一口分切り分けて鴇田の前でふらふら。
「お前も食う?」
「いえ、私は結構です。お嬢の分です、召し上がってください」
絶対そう言うと思ってたからわざとそう言ってやったに過ぎないが。
そう言われてあたしはホットケーキを口に入れた。
ふわとした弾力。上品なメープルが口の中で溶け合う。
「なぁ鴇田……あたしも叔父貴に謝りたいんだけどどうすればいい?」
向かいの席でマイペースに新聞を読んでいた鴇田は、新聞から目を上げて
「しばらくそっとしっておくのが得策だと思われます。
昨日の今日ですがね、花やホットケーキでお嬢の気を引こうとしてるのは分かりますが、
彼も面と向かってそのような謝罪の言葉を言えないのは
またあなたにひどい言葉を言ってしまうから、など考えているようですよ」
面と向かって―――
「……そう…だよな」
あたしはナイフとフォークを置いて、すぐ目の前で新聞を眺めている鴇田を見据えた。
「なぁ鴇田。お前の時間を買うとしたら時給いくら?」
あたしは何となく…じゃなく次に続ける会話のため聞いた。
「私の時間を?
お嬢、私の体は高いですよ」
鴇田はフっと色っぽく笑って心臓の辺りに手を乗せる。