。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
まだ眠りこけている戒をベッドに置き去りにして、キョウスケは紅茶を注文してあたしの隣で大人しくそれを口にしている。
そのキョウスケの様子が気になるのか、新聞の上からちらりと視線だけをキョウスケに向ける鴇田。
一体―――…なんだって言うんだよ。
紅茶を飲み干したキョウスケは
「あ…」
短く声をあげ、鴇田の目の端がぴくりと動いた。
キョウスケはマイペースにカップの中身をあたしに見せてきて
「茶葉占いです。鳥のように見えませんか」
鳥……?
うーん…あたしにはただの黒い塊にしか見えないケド。
「くちばしが長く、羽も大きい。
鴇のように見えなくもないですが、輪郭がぼんやりしている。
不安を示していますね」
キョウスケが淡々と言い、
「へー…お前占いなんてできんの?」
新たな特技にびっくりしていると、鴇田は陶器のティーポットに入った紅茶をキョウスケのカップに注ぎいれた。
茶葉はたちまち舞い上がり、キョウスケが鳥だと指摘した茶葉は跡形もなく消えた。
「変なことをお嬢に吹き込むな。大体占いだ。私に何の不安があると言う…」
鴇田は不機嫌そうにしていたが
「冗談ですよ、俺占いなんてできません。
それに誰も鴇田さんのことだとは言ってませんよ」
キョウスケは新たに入れられた紅茶には口を付けずに、その紅茶を近くに置いてあった観葉植物の鉢植えへ流し入れる。
鴇田の神経質そうな眉がまたもピクリと動き、
その鋭い視線でキョウスケを睨むと、またも新聞を開いた。
「鳥に見えたと言ったが、お前も鷹だ。
羽をもがれて飛べなくならないように、気をつけろ」
「ご忠告どうも。でも飛べなくなったら真実を公開する手筈になっています。
そうなったら首を絞められるのは鴇の方だ」
し、真実って…??
ギリっ
鴇田の新聞を握る手に力が入り、眉間に一層皺を深く刻んだ。
さっきまで見せていた穏やかな笑顔は欠片もなくなり、いつになく迫力のある視線にあたしはドキリと心臓を押さえた。
鴇田の反応を楽しむようにキョウスケは口の端をわずかに曲げ、
「しー…、秘密は神社の中に」
キョウスケは唇に人差し指を当て、意味深に囁くように呟いた。
神社って、龍神社のこと??
キョウスケは鴇田に探り入れてるってのか??
てかなんかの暗号!?
見えない火花を散らしたキョウスケと鴇田に挟まれ、あたしは無言の二人の会話の意味が分からず居心地が悪そうに体を縮こませた。
な
何なんだよ、一体―――