。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「リコはキョウスケさん…龍崎くんの幼馴染のおにーさんが好きで、あたしはさっき会ったグロスのお兄さん♪
仲間だね!♪」
エリナはリコの手を握って嬉しそうに語る。
「てかマジでタイガのこと好きなの??こないだ電車で会ったイケメンは??
ほら、オオカミもらっただろ?」
そう言うと
「オオカミもちゃんとつけてるよ♪ジャーン、オオカミちゃんデコってみた☆」
エリナはバッグハンドルに掛けられたオオカミのぬいぐるみを掲げ、あたしとリコはそれを覗き込んだ。
殺風景だったオオカミの茶色いボディーにはレースの襟が付けられてたし、耳にはビジューが縫い付けられている。
しかもほっぺったがピンク色に染まってるのは、
「これはチークで塗ったの♪この子女の子だから♪」と勝手に決めてるし。
でも
「「可愛い~~!♪」」
あたしとリコは二人で勢い込んだ。
「でしょぉ!!?二人のもなんかあったらデコるよ?」
「て言うかさ~」リコはにんまり笑って、
「電車で会ったイケメンおにーさんって誰??」
今度はリコがエリナを追及する番。
「元々はサクラの知り合いで偶然会ったんだよ、そしたらオオカミのぬいぐるみくれたの。
すっごくかっこよかったけど結婚してるみたいだし…」
「ほら、リコだって会ったろ?タチバナをディテクティブごっこで尾行してたとき」
「ああ!あのおにーさん!」
ようやくリコも納得がいったみたいに大きく頷いた。
「エリナって大人の男の人が好き~??♪」
またもにんまり聞いて、
「だって何か包容力ありそうじゃない??♪」
「分かる~」
と返したのはあたし。
叔父貴に熱烈片想いのときは、あの腕でぎゅっと抱きしめられたらきっとどんな不安でも薄らいで安心できる気がした。
あたしを傷つけるどんな悪者からも守ってくれそうだし、実際守ってくれるだろう。
あの手をとれば―――
あたしは叔父貴の鳥かごの中、叔父貴の庇護の元何の心配もせず、ただ彼が手を差し伸べてくれるのを待てばいい。
空に羽ばたくのも忘れて、彼の愛情の中何も知らずぬくぬく育つ。
そんな鳥になれることは―――女にとって最高の幸せなのかもしれない。
それはつい最近の話なのに―――
もうずっと前の話に思えて、あたしはテーブルの上に乗せられた薔薇をちらりと見た。
水が無く、空気に触れた薔薇は生気を失ってぐったりしているように思える。
あたしは慌てて薔薇に水を上げるため一旦台所に向かった。