。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
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――『…警視庁では事故と事件、二つの可能性と見て捜査をしており…』
そこまで聞いて会長はテレビの電源をリモコンで切った。
都内の高級タワーマンションから見える朝の景色は
自分のマンションから見る景色と少し違って見えた。
同じ景色なのに。
彼の位置している高みから下界を見下ろすように―――
俺は電話を切ると慌てて会長のマンションに向かったと言うわけだ。
俺はその窓から視線を逸らし、淹れたてのコーヒーを会長の前に差し出すと、彼は大きくため息を吐き
「朝から呑みたい気分だぜ」
と額に手をやった。
スーツパンツの上にワイシャツだけを羽織っただけの格好。タバコを銜えながら会長は新聞を開いた。
俺はその新聞を退けると会長のワイシャツの前を合わせた。
「まだ……
まだお体が万全じゃないご様子です。お風邪を召されませんよう」
俺が彼のワイシャツのボタンを掛けると、彼は鬱陶しそうに俺の手を払い
「ガキじゃあるまいし自分でできる」と言ってタバコを灰皿にもみ消した。
「くっそ。シャワー浴びたかったのに時間がねぇ」
会長は忌々しそうにもう一本のタバコを口にしてネクタイを首にぶら下げる。
「石鹸の香りが漂ってますよ。寝る前に入られたのなら十分じゃないですか」
「俺は朝晩二回浴びるのがポリシーだ。じゃないと一日がはじまった気がしねぇ」
まだブツブツ言っていたが、俺はそれに対して何も答えずに自分のカップに口を付けていると
「俺は自分のポリシー曲げてまで準備に勤しんでるのに、優雅にコーヒー飲んでんじゃねぇよ」
と睨まれた。
「S…は、やはりスネークの頭文字か…」
会長は手紙の切れ端を眺めて目を細める。
「でも何故お前のところに―――?」