。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
龍崎グループ本社に向かう前に俺は響輔に電話を掛けた。
出社する前の数分でいい、こいつに聞きたいことがあった。
ジャケットの上から内ポケットら辺を押さえながら電話を掛けると
『おはようございます。“占いの館キョウスケのお部屋”は午前10時からの営業で…』
開口一番にフザケタ挨拶をされて、俺は眉をしかめた。
こいつでも冗談とか言えるんだな。
「繁盛してるのか?」
『お客は一人ですけどね。俺の“占い”に興味が?早朝料金掛かりますよ』
「それで結構。だが茶葉占いは飽きた。コーヒーのうまい店を知ってるが」
『出張サービスはしてません。俺の指定したところに来てください』
声のトーンを少しも変えずさらりと抜かしやがったこざかしいクソガキに舌打ちしそうになり、俺は額に手を置いた。
『ああ、それと―――最初に言っておきますが、“血液型占い”はしませんよ。
あれほどあてにならないものはないですからね』
挑発するかの物言いに苛立ちが募る―――と言うよりも、内ポケットの下で心臓がビクリと震えた。
『今日の相性占い。O型とAB型の相性最悪。これは当たっていそうですけどね』
「サイアクかどうかは“占い”しだいだ」
実の娘と同い年の小僧にすっかりペースを乱され、それどころか始終こっちがあいつのペースに巻き込まれている。
だけど時々…乱されるのも悪くないと思う自分がいる。
こいつなら―――俺の考えもつかない観点で何かを探りだすかもしれない。
そんな期待があったから。