。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「あの……ご注文は…」
ボックス席で何故か隣り合って座って真剣な顔している男二人に、ウェイトレスが怪訝そうに顔をしかめている。
あれこれ想像されそうで
「ああ、ホットコーヒー一つ」
そっけなく答えると、ウェイトレスは立ち去っていった。
ウェイトレスはそれでもまだ気になるのか俺たちの席を気にしながら振り向き、俺は腰をあげると向かいの席へと移動した。
「ようやく
認めましたね。一結があなたの娘だってこと」
キョウスケが目を細めてうっすら笑い、ゆったりとした仕草でコーヒーを口に付ける。
俺に勝った、とでも思ってるのだろうか。そもそも俺はこいつと勝負した覚えはないのに、
キョウスケは妙な勝利感を浮かべてにやりと笑った―――ように見えた。
俺は目だけを動かしその様子を見届け、タバコを取り出した。
「探り合いはごめんだ。その部分については認めてやる。
あいつは血の繋がった娘だ。それで満足か?」
あっさり認めると、キョウスケはつまらなさそうに顎を引いた。
「もっともがけばいいのに」
「人が困ってるのを見るのが好きか?だったらなかなか良い趣味だ」
「まさか。誰に対してもそうなわけじゃありません。
俺はあなたが追い詰められていくその姿を見るのが―――
楽しいんですよ」
僅かに身を乗り出して、挑発するかのように笑みを浮かべたキョウスケの、その次から次へと出てくる減らず口を塞いでやりたかった。
でも
追い詰められてる―――か。
あながち外れてはいない。
「お待たせいたしました。ホットコーヒーです」
先ほどのウェイトレスがコーヒーを運んできて、俺たちの会話を聞いていたのだろうか
探るようにまばたきをして慌てて立ち去っていった。