。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
どんな想像を巡らしているのか、こっちは想像もできんがウェイトレスの脳内事情よりもこっちの事情の方が大事だ。
時間もそれほどないし。
俺は前置きなしに自分のスマホをテーブルに滑らせた。
キョウスケが手で止め、その画面には俺が撮った画像が映し出されていた。
さっき送られきた手紙の一部―――会長に見せた部分と同じものだ。
「S……」
キョウスケが目を開いて、ここにきてようやく優位に立てた気がした。
「ニュースは見たか?」
俺が聞くとキョウスケはゆるゆると首を横に振った。
「俺、昨日帰ってないんです。今まで漫喫にいました」
「漫喫?何でまた。虎間と喧嘩でもしたか?」
「違いますよ。ちょっとした諸事情です」
キョウスケは深くまで教えてくれなかったが、こっちとしても知ったところで何とも思わない。
どうせこいつが何かやらかしてお嬢に怒られでもしたんだろう。それで帰り辛くなってるだけだ。
でも…ああ、それで寝不足ね。
ようやく理解できた。
「お前、泊まるオンナの家もないのか?」
「あなたと違って俺はクリーンなんです」
またも腹立たしいことを言われたが、キョウスケの方は寝不足の事情よりもケータイの画像が気になるらしい。
「さっきニュースで確認した。杉並区の使われていない倉庫で焼死体が発見された。
二体も、だ。心当たりは?」
俺は指を二本立てると、キョウスケはその指先をうつろな視線で眺め、やがてゆるゆると首を横に振った。
「本当に知らない、と?シラを切っても無駄だぞ。
どのみちスネークが絡んでいるとなると青龍会が黙っちゃいない。
お前と少しでも関係があったのなら今のうちに吐いておいたほうが楽だぞ」
キョウスケはスマホをテーブルに置いてこちらに滑らせると黒い切れ長の目を険しくさせて俺を睨んできた。
「言ったでしょう?俺はあなたと違ってクリーンだと。
俺は…もちろん戒さんもやってはいません」