。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。



―――


「悪かったな、さっきは」


あたしは休憩に入りがてら、鴇田とキリさんにランチをご馳走。


トレーに乗せたバケットサンドをテーブルに並べると、


「ありがたく」てな意味で、鴇田が軽く手を挙げ


「一度引き受けたものはきっちりやり通しますよ、ご心配なく」


と無表情に言ってバケットサンドにかぶりつく。


「ごめんなさいね~この人不機嫌で。


朝からイヤなニュース聞いて…」


キリさんはそこまで言いかけて


「おい」


鴇田がキリさんを咎め、キリさんは軽く咳払いをしてアイスコーヒーのストローに口を付けた。


てかこいつ不機嫌だったの??


てか機嫌良いときがあるのか?


たとえあったとしても区別がまったくつかん。


それよりも…イヤなニュースって何だろう。


どうせこいつのことだから株と為替の情報だろうけど。


あたしに聞かされてもさっぱりだから大丈夫だぜ?


そう思いながら、あたしもサンドイッチに口を付ける。


バケットサンドに口を付けながらも、視線を感じた。


カウンターに居る戒がこちらをちらちら気にしている。


戒はまだキリさんを疑っているのか、その視線に友好的なものを感じなかった。


さすがに店だし、周りに客もいるし、もしキリさんが白へびでも下手なことはできないはず。


そう分かっていても、やっぱり気になるみたいだ。


これじゃせっかく美味しいって評判のバケットサンドの味も全然分かんないよ…


一方…疑われている当のご本人キリさんは―――


「私、アボカド苦手なのよ。翔、食べて」


サンドイッチの中からアボカドを手で取り出し、


「むぐっ!」


前触れもなく鴇田の口に押し込んでいる。


「代わりにエビちょうだい」


まだ口をもぐもぐさせている鴇田のサンドイッチから勝手にエビを取り出すあたり、


白エビ…じゃなくて白へび……と言うより、〝女王さま”がぴったりくるようなマイペースぷり。




< 385 / 841 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop